- 建物診断実績のご紹介
今回の記事は、相続で取得予定となる賃貸マンションの管理状況の診断、建物状況の診断をY様からご相談いただいた際の内容になります。
最終的に、弊社の長期的な管理運営の計画にご理解いただき、管理業務をお任せいただくことになりましたが、記事は建物診断を中心に進めていきます。
弊社では、管理診断、建物診断はセットで実施することがほとんどですが、今回は入居率が高い状況(入居率95%)でご相談を受けたこと、周辺環境を見に物件を訪問した際の現地の現状から、建物診断を最優先で行うことにしました。
なお、調査した建物の状態から、オーナー様、ご入居者様へ配慮し、オーナー様のご実名、物件所在地は掲載せず、物件が特定できないような写真のみ掲載しているため、分かりにくい面もありますがご容赦ください。
まずは、さっそく物件への立ち入りの許可をいただき、物件の目視調査を行うことにいたしました。※管理受託前で他社が管理業務を行っていたため。
調査をしてみて・・・
通常、建物診断等を行う場合、将来起こりうるトラブル等の保全策を提示するケースが比較的多く、顕在化している建物のトラブルは、診断時点ではそれほど多くはありません。
しかし、今回の物件に関しては、あらゆることが現在進行形で進んでいる状態が、目視レベルですぐに確認できました。
大きくは、
1・マンション中がクラックだらけ!
2・マンション中の塗料が剥離してる!
3・マンション中が水漏れだらけ!?
の3つが問題点でした。
また、サンプル住戸として、室内を調査させていただいたお部屋では、長年の劣化を放置していた結果、室内への水の侵入跡だけでなく、水を含んだ壁の欠損、降雨の度に起こる漏水、カビ、サッシ回りの大量のクラックなどが確認することができました。
すべての不動産の劣化症状の詳細な説明を行うと、文字数が膨大になってしまうため、今回はオーナー様ご自身でも確認することができる「クラック(ひび割れ)」について、少しご説明いたします。
大きく分けて、クラック(ひび割れ)は、下の2つに大別することができます。
・0.3mm以下のクラック → ヘアークラック
・0.3mm以上のクラック → 構造クラック
の2つです。
0.3mmを超えるクラックは、外壁の表面から内部の構造にまで影響を与えるため、構造クラックと呼ばれ、水の侵入による様々なダメージ(爆裂現象等※)を引き起こします。
また、ヘアークラックでも毛細管現象※により、建物内部に水が侵入することがあるので、決して構造クラックでないからといって、放置してよいクラックでもありません。
クラックは、コンクリートの乾燥から竣工後すぐに発生するケースから、経年により地震などによって発生するものまで、発生時期は様々ですが、すでに前回の大規模修繕工事を行って相当年数経過している場合は、クラックを確認できた場合は、修繕工事の検討を始めることをお勧めします。
※コンクリートの爆裂(爆裂現象)
クラックなどからコンクリートの内部に水が浸入し、躯体内の鉄筋に錆が発生した結果、膨張しコンクリートが押し出され、コンクリートの欠落や、鉄筋が露出してしまう現象
※毛細管現象
表面張力により、わずかな隙間(クラック)をつたって水が内部に侵入すること。
さて、今回ご依頼をいただいた物件では、目視調査できる範囲だけでも、100箇所をはるかに超える構造クラックが建物内外の至るところで確認され、また塗装の浮き、剥離、庇部分の爆裂現象、コンクリート内部の配筋からの錆の流出など、劣化が確認できない箇所がないほどの状態でした。
雨水の侵入口と推測される屋上防水の亀裂部分や外壁クラックの箇所の多さから、台風などの風や豪雨などの際に雨水が建物内に侵入するだけでなく、通常の雨の時にも建物全体から水が浸入していることが分かる状態でした。
(余談ですが、診断を実施した時の管理会社の担当者に確認すると、管理を受託後、数年経過しているにも関わらず、棟内に複数ある爆裂現象や1cm近く広がっているクラックの現状を全く認知しておらず、また室内調査でお邪魔した住戸にいたっては、1DKの間取りすべての居住スペースから、降雨のたびに雨漏りが発生している現状を管理会社に通報していたにもかかわらず、何年間も放置されていることが判明いたしました。その管理会社は毎月巡回報告書を家賃の明細と一緒に郵送しているようですが、本当に巡回をしているのか・・・という疑問が残ります。)
後日、今後は弊社に管理をお任せいただけることになりましたが、建物も人間のカラダと同じで早期発見、早期治療の機会を逃したため、大掛かりな手術が必要というステージになる可能性が非常に高くなりました。
ぜひ、現在所有されている物件に思い当たるフシがあれば、まずはご自身で物件をくまなく目視し、気になる点が少しでもあれば、信用できる管理会社や専門家へご相談いただくことをお勧めします。
調査を行った結果、「長期間継続した賃料収入を得たい!」というオーナー様のご意向に基づき、屋上防水工事、外壁塗装工事を2021年の梅雨入りまでに実施する計画をたて、劣化部分の改善を行うだけでなく、入居者層のターゲットを広げる外壁塗装工事や、空室のリフォーム工事を通して、資産価値の向上を図る方向性で認識を共有することができました。
また、今回の室内調査の結果、室内に予想を超える劣化症状が確認されたため、全戸を対象とした室内調査をご入居者様にご協力をいただきながら、年明けから開始し、退去時にかかるリフォーム工事以上にかかる金銭的負担の把握に取り組むことになりました。
調査の過程で幾度となくY様とお打合せの機会をいただきましたが、一般的に収益物件のオーナーの多くは、所有する物件を訪問する機会も少なく(ご高齢や本業が多忙などから仕方がありません)、任せている管理会社や業者の報告に対し、盲信に近い対応をされております。※他の記事にも書きましたが原状回復工事などが良い例です。
当然、まじめにオーナーのことを考え、積極的に言いにくいことやより良いアドバイスを提供しようと奮闘する担当者もいますが、やはりご自身が所有する物件の将来を左右する判断を「良い会社・良い担当者にあたるかどうかのギャンブル」で決定してはいけません。
賃貸経営は、大きく分けてリーシングマネジメント(募集活動)、コンストラクションマネジメント(建物管理)、テナントリテンション(入居者管理)から収支計画まで、非常に多岐にわたる知識・経験が必要になりますが、オーナーの皆様には、それらの業務の「内容を理解する」努力だけは身につけていただき、その上で、管理会社や専門家との強固なパートナーシップを構築していただければと思います。
今回のケースは、長期間するべきことを怠った結果、当初の不動産経営計画を大きく外れる支出が必要になってしまうケースになります。
決して、オーナー様だけに責任があるわけではありませんが、本文にも記載の通り、ぜひ「賃貸経営の内容を理解する」努力を身に着けていただき、長期的な収益の獲得をご実現いただければと強く思っております。
・今の管理会社で良いのだろうか?
・なかなか空室が埋まらない!
・提案されるリフォーム工事が高すぎる!
などの賃貸経営でお悩みの方は、ぜひお気軽にヘリテージまでお問い合わせください!
現在の募集条件、募集活動の調査から、賃料査定業務、リフォーム工事の見直しまで、オーナー様の「資産の代理人」として、最適な管理のご提案をいたします。
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